双子の赤字に加えて、企業の財務体質の悪化も見逃せないアメリカ経済の構造的弱さになっていると思われます。一方、個人のバランス・シートも借金漬けになっています。こうした事態が生じているのは、〈1〉すでに触れましたが、アメリカの税制が貯蓄より消費優遇型であること:具体的にいえばローン金利の所得控除が大幅に認められているため、国民が借金を好む傾向を助長している、〈2〉人口構成に占める低貯蓄年齢層の比重が上昇していること:70〜80年代にかけて、ベビーブーマー世代が新世代を形成、子供の養育費の増大など消費性向の高い年代となったーなどが主に影響しています。今後については、急速な貯蓄率の上昇は期待できないものの、徐々にではありますが、是正される可能性は大きいとみられます。それは政府が消費優遇型の税制を修正しつつあること、また人口構成も今後は、80年代の消費支出拡大に寄与したベビーブーマーの中心世代が高貯蓄年齢層に移りつつあることなどが展望されるからです。一方、先に触れた企業部門の借金漬け体質に関しても、M&Aブームが終わり、株式市場活性化を通じた債務の株式化などにより債務の削減が比較的順調に進みだしています。アメリカ経済の第三のアキレス腱である個人と企業の低い貯蓄率、借金漬けの体質は、90年代に入って、ようやく多少の曙光がみえてきたといえるかもしれません。
株式会社以外の会社についても簡単に触れておきましょう。新会社法では「会社」の種類を、株式会社のほか、「持分会社」と呼ばれる合名会社・合資会社・合同会社の3種類としています。株式会社では、出資による社員(=出資者)の地位を「株式」と称し、持分会社では、社員の地位を株式ではなく、「持分」と称します。持分会社の特徴は、?原則として社員の誰もが業務執行権を持ち、?業務執行の意思決定は社員の頭数の過半数で行われ、?利益分配も自由に定款で決められる点などです。持分会社は、組織の構成員が少数で、強い信頼関係も必要なので、組合に近いタイプの会社組織だと言えます。また、合名会社は社員全員が無限責任を負い、合資会社では無限責任を負う社員と有限責任を負う社員の両方がいます。合同会社は、株式会社と同じく有限責任です。持分会社は、個人だけではなく、法人も社員になれるため、企業同士の合同事業などに適した会社だとも言えるでしょう。なお、新会社法の施行後は、有限会社は設立できません(従来の有限会社は法律上は株式会社扱いとなる)。この章では新会社法を中心に駆け足で説明してきましたが、株式会社の設立が容易になったのは紛れもない事実です。「資本金1円」「取締役1人」でも株式会社を設立できるのですから、2章以降で法人化のメリットとデメリットを比較した上で、個人事業の法人化を前向きに検討することをおすすめします。
これまで世界経済を牽引してきたのはアメリカ、ヨーロッパ諸国、日本といった国々だが、近年著しい経済発展を成し遂げ、今後の世界経済に大きな影響力をもつとされている新興国がある。BRICs諸国である。「BRICs」とはブラジル、ロシア、インド、中国の4か国の頭文字を並べた造語。2003年10月、アメリカの投資銀行、ゴールドマン・サックスのリポートのなかで発表された。そのリポートには「2003年以降、ブラジル、ロシア、インド、中国の4か国が目覚しい経済発展を遂げる。2040年には4か国の経済規模が主要先進7か国の合計を上回り、50年の国別の経済規模は中国がアメリカを抜いて1位に躍り出る。以下2位アメリカ、3位インド、4位日本、5位ブラジル、6位ロシアの順になる」と記されていた。それまでのGDPランキングは1位アメリカ、2位日本、3位ドイツ、4位イギリス、5位フランスの順だった。リポートは、そんな世界経済の勢力図が大幅に塗り替えられることを予測していたものだから、世界中に衝撃を与えたのである。