ふてくされ主婦にならないために、私には、家族と話をしたり、テレビを見ながらでも調理ができ、皿洗いができる、対面式のキッチンが必要だった。また、収納下手の私には、どこに何がしまわれているのかが一目瞭然でわかるキッチンが必要だった。引っ越しの時に、棚の奥のほうに、しまったまま忘れているものがあまりに多くて驚いた。賞味期限の切れた缶詰や瓶詰が、戸棚の奥から山のように出てきた。主人は私を、5分で前のことを忘れる犬頭というが、本当に、見えないものは、すぐに忘れる。
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見えないものは、私にとっては、無いのと同じだ。だから、今風の扉の多いキッチンは、私向きではなかった。また、仕事を持っているので、できれば、なるべく動かないキッチンが欲しかった。料理を短時間でパッパッとつくるには、自分を軸にして、身体の向きを変えるだけで、洗い物も煮物も焼き物もでき、調味料も食器も揃えられる、ズボラなキッチンが必要だった。これなら、年を取って身体が思うように動かなくなっても、ちょっと高めの回転イスに腰掛けながら料理がつくれる。